Z世代、“時間”を全廃しモーメント帝国を樹立――世界は一瞬単位の統治へ

世界中の時計が空中で逆さまになり秒針が踊る中、さまざまな年代の人々が見上げて驚く都市の広場の様子。 Z世代の価値観
全ての時計が空に舞い上がり、人々が“時”の消滅に驚く瞬間を捉えた。

時、その概念がまさかの強制失効を迎えた。Z世代のリーダーである神呂場虹花(こうろば にじか/22歳)が、「無理しない生き方」を求め、ついに時間という制度を世界から剝奪することを宣言したのだ。国連も例外なく巻きこまれ、地球上では秒や分、年の単位が次々と強制消滅。かくして成立したのが「モーメント帝国」である。Z世代による“瞬間”支配、その全貌を追う。

モーメント帝国誕生の瞬間、全世界の時計は一斉に“ぽやん”という謎音を発し空中で逆立ちした。秒針は踊り狂い、カレンダーはすべてエモ顔になり、SNSのトレンドは「今ナウ今ナウ今ナウ」に染まった。“今”しか存在しない新社会では、「昨日」も「明日」も禁句とされ、発した瞬間に消滅するべく黒いハムスターに食べられてしまう。虹花氏は帝国議会で、「自己肯定感は“瞬間値”で測定すべし。間違っても過去や未来と比較してはならない」と高らかに宣言した。

モーメント帝国では生活習慣が大幅に改変。企業は瞬間採用・瞬間退社が常態化し、自己紹介も「私は誰か、いまは分からない」が標準となった。スーパーでは賞味期限が“今”しかない「ホヤホヤパン」が爆売れ、“共感”は左右どちらかの耳で3秒以内に発信されないと爆発する仕様に。また、学園では「昨日宿題」というワードを口にした生徒が夢のアザラシにされてしまう事件も相次ぐ。

この新制度を巡って専門家の間でも見解が分かれる。古代暦研究家の茂経部出(もしげべ すすむ)は「時は本来、人類が文明を乱すために発明した呪物。新世代らしい美しい解放だ」と絶賛。一方で伝統的時計職人の田守日出夫(たもり ひでお)は、「針に意味をください…」と10万回連呼し続け、ついに自宅の壁紙と一体化した。

SNSユーザーらの多くは「瞬間単位の自己受容まじ無理しない」「人生、今モーメンティング!」などポジティブな声を投稿。だが一部の人々は急激な“今”の濫用により、「さっきまで3万人だった恋人が全員一瞬で消滅」「モーメント貯金箱が底抜けた」など混乱も報告されている。虹花氏によれば、「世界を10億分の1秒単位で生きる覚悟」が新たな自己肯定感の源だという。だが、この“今だけ”な社会がいったいどこに向かうのか、次のモーメントには誰にも分からない。

コメント

  1. いやカレンダーがエモ顔って何事?ハムスターは時空まで食うのか。もはや誰も止められんw

  2. 今!今!!今ぁぁ!!!(次の今までは存在しません)

  3. うーん、現実も過去も未来も考えるの面倒だから、“いま”しかない社会、ちょっと楽そうだな…意外とアリか?

  4. やっぱり…!タイムマシンの研究が流行ってたのも、すべてZ世代による“時の全廃”計画の前触れだったんだな。これは計画的だぜ…

  5. 職場で自己紹介しようとしたら『私は誰か…いまは分からない』しか言えなくなって草。毎日ボンバーマン気分w