これまでにも斬新な課題設計で知られる日本ボルダリング協会は、今年度の目玉イベントとして『第1回透明壁ボルダリング世界選手権』を開催した。会場となったタカミ山麓特設フィールドには、世界中から腕に覚えのあるクライマーたちが大挙して集結。しかし蓋を開けてみると、誰一人として“課題の壁”を目視できないという予想外の状況が発生し、前代未聞の混乱に包まれることとなった。
コンペ当日、50名の出場者はエントリー受付で配布された『透明壁検知用特製ゴーグル』を装着。しかし実際には、このゴーグルも装飾目的以外の機能は一切なく、誰も壁の姿を確認できなかった。「誰…どこを…登れば…?」とうろたえる選手たちの傍らで、審判団は無言で厚底マットに寝そべり、天候について論じ続ける始末だ。ボルダリング界で古くから伝わる“風を感じて登れ”という格言が、まさか本当に物理で試される日が来るとは予想外だった。
セッターの石角満(いしかく・みつる)氏(公認課題開発士)の説明によれば、「今年の課題は“壁を疑え、己を信じろ”をテーマにした完全透明セット。全課題のホールドには『逆摩擦チョーク』が塗布済みで、触れると感触だけがマイナス方向に伝わる」とのこと。事前に配られたルート図には点線しか描かれておらず、ルーフの角度や核心部の位置も一切不明。選手たちは序盤から空を掴みあい、突如落下する者や、なぜか空中で体が水平分離する選手も現れ、観客からは悲鳴と大爆笑が入り混じった。
大会を見守ったボルダリング評論家・野首余助(のくび・よすけ)氏は「本来、ボルダリングは己と重力との対話。だが今回は己が消滅しかけた。リソール(靴底修理)は間に合わない」と語る。SNS上では「#不可視壁チャレンジ」「#今日も課題が見えない」などのタグが即拡散し、“登った記憶のある者が勝者”という大会ルールの不明瞭さが新たな混乱を呼んでいる。
なお、大会公式発表によれば、次回は“重力が逆転する壁”や“マットが生き物化する課題”の採用予定もあるという。競技者・観客・そして壁そのものの存在意義が今、今世紀最大規模で問われている。各方面からは「アウトドアスポーツの未来が怖くなった」「壁の価値を再考すべき」といった声が寄せられているが、協会は『壁が見えているうちはまだ甘い』とのコメントを残した。
コメント
冷静に考えて、壁が見えない時点でボルダリングなのか、哲学なのか分からん。しかも逆摩擦チョークって何?滑るの?手が逆に汚れる?公式、もはや修行なの?
見えない壁……それは社会の壁!登るたびに魂が消滅し、逆摩擦で記憶も落ちる!我々は今、歴史的瞬間の渦中にいる。審判は寝てる場合じゃない!!
え〜!次回はマットが生き物になるの!?タコ型マットに絡みつかれて“生還課題”とか?いいぞCFN!俺もルート図に点線しか描けない絵心なので出場資格あるなw
うん、確かに壁が見えているうちは登った気になれないよね。登った記憶がある者が勝者って、人生と同じだ…(納得しちゃった)
え、みんな空中分解してるってことは全員優勝?それとも壁すら存在してない世界線?透明壁検知ゴーグルのお値段が気になります。