かつてない挑戦として知られる新進気鋭のシアターカンパニー「鵺玉座」が、今週、観客・役者・脚本の存在しない『透明演劇』を旗艦小劇場で上演し、なぜか連日満員御礼となる異常事態が発生している。劇場の中には誰もいないはずなのに、なぜか人が詰めかけ、チケットは即日完売。SNS上では――
「舞台にあふれる静寂、その壮大な無、鳥肌立った!」(観客 稗田鈴美さん/29)、「何もなかった。でも満たされた気がする。帰りの電車で泣いた自分にも気づかないふりをした」(会社員 猿渡光一さん/38)――など未曽有の盛り上がりを見せている。
劇場スタッフによれば、上演される『透明演劇』には舞台セットも照明もなく、時刻になると観客同士が目配せしつつ着席するのみ。カンパニー主宰の禱島雲助(とうしま・うんすけ)氏(45)は「“演劇とは何か”への疑念、いや、もはや世界そのものへの問いかけ」と強調。観客に配られるパンフレットには白紙の束と「想像してください」という文言のみが印刷されているという。
初日に劇場を訪れた考古学者の古井戸香苗さん(52)は「何も起こらなかった。だが、何も起こらなかったことの深みに逆さに落ちていった。隣席の見知らぬ女性と“誰もいない役者”の動きを前のめりで追ってしまう怪現象だった」と語る。鑑賞後には自然発生的に10分間のスタンディングオベーションも巻き起こったという。
一方、演劇評論家の佐須礼野友規氏(41)は、「第三幕ではカタツムリの出演が示唆されていた」と暗号のような解説を展開。さらに劇場の前には「出演者全員のサイン会開催」との張り紙が掲示されていたが、サイン会場には誰もおらず、参加者は壁と“心の対話”だけをして帰るスタイルが定着しつつある。
SNSでは“#透明演劇二度観た人ゼロ説”が爆発的にトレンド入りする一方、通販サイトでは『透明演劇DVD(内容:透明)』が予約殺到。今後は全国巡回公演も予定されているが、「地方公演になったら、いよいよ観客の存在って何なのか諦めそう」と語る劇場支配人の緋村鏡子さん(58)は、笑顔で“次は透明楽屋裏ツアー”の開催を予告した。
コメント
演劇ってここまで行くともう“無の芸術”じゃん。もはや自分の存在も疑いそうなんだが…観た人、本当にいる?
カタツムリの出演シーン、あれヤバかったですよね!!見えなかったけど確かに心で感じました!w
考えてみれば、何もないということもまた、何かであるのかもしれない。私は今、確かに透明な涙を流している。
透明演劇DVD予約したけど、開封したらケースも透明で中身もなかった!いや、これが現代アート…なのか…?w
出演者全員のサインを壁でゲット完了。たぶん俺、今日から“透明ファン”だわ。地方公演も、現れないけど絶対行きます!