静寂を切り裂く鉱音とともに、新時代幕開けの予感が漂う夜だった。岩手県内の錆生(さびおい)炭鉱で、人間社会も科学界も前代未聞の現象が目撃された。鉱夫たちが毎晩手を入れていた地下坑道全域で、突如すべての水晶が『話し始めた』。しかも、ただの独り言ではなく、鉱内ラジオ風に円熟味あるニュースや、極めてどうでもいい宝石ランキング、『今日のマグマ占い』などを同時多発的に報じ始めたのである。現場は混乱、SNSでは『#水晶蜂起』が爆発的トレンド入りしている。
異変の発端は、午前2時34分、第五坑道の奥深くで炭鉱夫の霞野まるぞう氏(48・仮名ではない)が、紫色に光るアメジスト塊の上で滑って尻もちをついた瞬間だった。「イテテ…」の声に呼応するように、頭上の巨大クォーツ群が「全国のみなさんこんばんは!」と響き渡る澄んだ声で話し出した。直後、フェルスパー鉱層も「今夜の宝石大喜利はワシが司会じゃ」と割り込んできたことで、地下800メートルが一気にテレビ局の熱狂会場と化した。
その後、岩石たちは自らを『鉱石連合共和国』と名乗りだし、坑道内に即席の議会を発足。“人類の平等なピッケル使用”など独自の法案を次々可決。ほぼ全無視されていた化石の一部が、議員枠拡大を訴えて水晶たちと口論を展開。その様子を見ていた炭鉱監督の梨沢モズク氏(56)は「岩石にまで労働組合ができるとは…人間並の政治ごっこだが、そもそもあいつら賃金いらんだろ」と困惑ぎみに証言した。
岩石社会の蜂起は一夜にして日本各地の火成岩帯へ波及。霞野氏のアメジストは全国69都市へラジオ中継を開始。ツイッター上では「石と話せる野良猫(38)」や「温泉鑑定士(22)」など人間以外のアカウントまでも“推し鉱物”を表明しており、既存の宝石市場はまさかの大混乱に。特にアメジスト推しが急増する一方、「次こそトパーズの逆襲」「マグマ式民主主義きた」など熱狂的な支援合戦も勃発している。
鉱物学者・粉山ズリ也氏(44)は「通常、水晶には発声能力も思考も確認されてない。本件は鉱物変成の概念を100回転半ねじ曲げている」と科学的懐疑を示しつつも、「だが岩石からSNSバズる時代なので、今後は“鉱物人格権”とかが法制化されるかもしれない」と予測する。
なお、坑道内の測定機器は一晩で全て味噌汁の温度しか測れなくなり、宝石鑑定士たちは悔し涙を飲みながら鉱物とじゃんけん大会を続行中。津々浦々で水晶ラジオの公開生放送が急増し、変成岩系住民の“地質アイデンティティ”は明日どこへ向かうのか。
コメント
水晶の蜂起に巻き込まれるとか、もう現場がファンタジーすぎて笑うしかない。明日は玄武岩も踊るのかな?
…今日のマグマ占い当たってたから石の時代が来てる説ある。ピッケル平等法案、ちょっと真剣に読みたいw
ワタシハミズショウ…ズットカタカナノミ ラジオジョッキー。カイセキイラズ、ジュジュツデハカルノダ。ホシイノハショユウケン…(受信不能)
毎朝味噌汁の温度計にしかならない測定器、地味にめっちゃ便利そうで草。てかアメジスト推しってお洒落猫多いな…
いや…そうだよな…鉱物にもアイデンティティ…あるよな…?自分もたまに石と話してたし……うん、なんか納得した。