“動く椅子”だけで暮らす森誕生──家具主導型アートインテリア計画が失踪者を続出させる

苔むした人工の森の中を自走する多種多様な椅子が整然と並び、奥へ進んでいる場面。 新感覚インテリア
ポピュラーロート森を駆け抜ける自走型椅子の群れが、日々新たな都市伝説を生んでいる。

昨今、都市部で話題を集めているフレキシブル家具。しかし、北国カムマチ州で突如始まった“動く椅子主導型インテリア・コミュニティ”は、その概念を遥かに凌駕している。自走型家具が森を拡張し続け、住民が部屋ごと景色ごとに“行方不明”となる前代未聞の現象が波紋を呼んでいる。

カムマチ州東部に広がる人工樹海〈ポピュラーロート森〉。この森の中に整然と並ぶのは、家屋でもテントでもない。2000脚以上の“自我を持つ椅子”たちが、苔むした地表を時速1.5kmで意気揚々と駆け抜けている。開発主導者の家具体験師・長柄ペルト氏(41)は「椅子が住人を選ぶ時代が来た。ヒトが家具に癒やされるのではない。家具がヒトで癒やされるのだ」と意気込むが、現地ではすでに市民の数人が“空き家”として椅子ごと森に吸収されてしまったと嘆く声もある。

この異様な取り組みの根幹には、葉緑体AI搭載の次世代センサー技術が導入されている。椅子は自ら沈黙と語らいを選択し、接触した人間の脈拍・温度・ジョークのセンスなどで熱狂的な癒し空間を提供──もしくは無言で背を向けて森の奥地に走り去る。その様子はまるで“選ばれし者だけが許される森の宴”と形容され、美術関係者の間では「家具が主役のアートパフォーマンス最前線」だと絶賛されている。

だが、住民の生活は混乱の一途をたどる。家具同士が夜中にパーティーを開き「センス悪いユーザー」を討議、投票で追放先を決める説も浮上。実際、住民の一人である配管工・丸霧ノヴァ(55)は「昨日までくつろいでいたはずのリクライニングチェアに乗ったら、2キロ先の湿地帯に連れて行かれた。しかも椅子から『君はもっと癒しスキルを磨くべき』と謎めいた説教を受けた」と動揺を隠さない。

SNSでは「森ごと引っ越せる時代が来た」「椅子より先に椅子から出張命令が下りた」など、理解と混乱が渦巻く。都市計画アナリストの星森サユリ氏(36)は「この現象は家具による空間バグと言える。家具の意思に任せたコミュニティ設計がバーチャル化を超えた未来を示唆している」とコメントしている。今後、冷蔵庫軍団や観葉植物連盟の“自律拡張”が噂される中、人類が家具に選ばれる社会は果たしてどこへ向かうのか。

コメント

  1. いや椅子が説教してくる時代ほんと草。俺も胡座かかされたいわ(物理的に)

  2. 森ごと引っ越せるなら次は洗濯機で海渡るしかない。家賃どうすんのさ!?

  3. 椅子の主観で追放って、それもう家具じゃなくて新種の上司では?生活、成立しませんけど。

  4. なるほど、家具が自立すれば人はもう座らなくても済むってことか。何だか救われた気がする…

  5. ポピュラーロート森にて椅子集会あり。私は森の一脚、我こそは人類最後のクッション、座布団教の教義を広めようぞ。