推し活の新潮流は、もはや人でもキャラクターでもない。全国で突如巻き起こった“薬味推し活”ムーブメントの先頭を走るのは、想定外の食材――本ワサビだ。誕生からわずか2週間で公式ファンクラブ会員が3万名を突破、仮想ライブやサイン入り葉っぱ販売、さらには推し交流パレードまで、ワサビ推しによる圧倒的な盛り上がりが各地で報告されている。
ワサビ様ファンクラブを立ち上げたのは、静岡県出身の会社員(35)、椎名激辛氏だ。「最初はランチの蕎麦にワサビを載せすぎて、“これは推せる!”と直感した。葉の香り、根の刺激…存在そのものが尊い」そう語る椎名氏の呼びかけに共鳴した男女老若100名が、初回ファンミーティングに集結。イベントでは“新芽握手会”が開催され、参加者の手のひらに次々ワサビの新芽が乗せられたとのことだ。
バーチャルライブにも、ワサビ推しならではの熱量が爆発。公式キャラクター“ワサビ様”が八合目から生配信し、本人(ワサビ本人との主張)のトークタイムにはコメント欄が「ヒリヒリする!」「涙止まらん推し尊い!」で埋まった。ライブ終盤、ワサビがカメラに向かって静かに根を伸ばすだけで、視聴者は一斉に“推しエア擦り”アクションを始めたという。施設側は「配信サーバーが香りでショートしかけた」と苦い(が、思わず泣けるほど旨い)コメントを出している。
ワサビ推し交流の過熱は、地域社会にもじわじわ広がっている。超高齢者クラブ「永遠の緑」は、例年の桜見会に代えて今年は“ワサビ狩り遠足”を開催。新会員の篠原(84)は「かつてはアイドル追っかけだったが、今は推し(根)活に全ベットしている」と語る。交換サイン会では、名前入りの葉やすりおろし証明書をもらうために長蛇の列ができ、“公式サイン入り根茎”を首から提げて散歩する愛好家も増えつつある。
一部の専門家はこうした薬味推し活の拡大を予想外と評する。薬味社会学者の近藤摩訶(ふしぎ)氏は「人々は香辛料に自己投影し、辛さを通して感情表現の新しい地平を開いている」と分析。「次はミョウガ、柚子胡椒推しが台頭するだろう」と展望を語ったが、SNS上にはすでに「わさび様が最強!」「涙は推しの証明」というポジティブな投稿が溢れている。グッズ展開も加熱するなか、推し活最前線はますますワケのわからない香りに満ちているようだ。


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