会議室に響き渡る“ド・ミ・ソ”──与座有限知識工業が本格導入した「全社員参加型ホワイトボード合唱団」による新ナレッジマネジメント手法が、想定外の事態を巻き起こしている。時短やプロジェクト効率化のために始まったこの制度だが、全く別の意味で会社を揺るがしているという。
きっかけは、取締役の海鼠圭一郎(なまこ・けいいちろう、49)が見た夢の中で“情報共有が歌で行われる会社は倒産しにくい”と謎の学者から助言されたことに遡る。翌日、海鼠取締役は全社員に対し、会議室中央の巨大ホワイトボード前で“和音による議題共有”を義務化。具体的には、発言したい社員はボードにキーワードを書きつつ、同時に三和音で自論を熱唱するのがルールとなった。
「最初はみんな、意味がわからないままカデンツァを書いていました」と語るのは、人事部の頭巾咲子(ずきん・さきこ、36)。「昨日は“在庫”という単語と『ドレミファソラシド〜♪』しか、誰も歌詞にできなかったんです」。その日提出された議事録には、ホワイトボードに198個の“在庫”という単語だけがリズミカルに並び、誰が何を言いたかったか一切不明な状態だったという。
やがて合唱団として活動を続けるうちに、和音の解釈をめぐって社員間の対立が発生。営業部の袋井太郎(ふくろい・たろう、28)は「僕たちテノールはプロジェクトの納期短縮を訴えていたのに、バス担当がずっと“納豆ご飯”の話だけを熱唱していました」と困惑気味。SNS上でも《今朝も父親が“減価償却”をファ♯レ♯で朗々と歌ってから出勤した。もう家族が心配》や《歌声とフリクションペンの擦れる音で近隣住民が寝不足》など混乱の声が増加中だ。
専門家の角谷栞一(すみたに・かんいち、ナレッジマネジメント評論家)は「知識共有を声量で競わせると副次的にビブラート議決や即興スキャット誤発注など新たな意思決定リスクが生まれる。今後、“議題の主旋律化”や“課題認識の裏声化”など更なるバグも懸念される」と指摘。一方、与座有限知識工業ではワークライフバランス推進の一環として、金曜以外は“全社員カノン退勤”を試験導入すると発表。一人ひとりが歌い続けながら机を離れるその光景が、次なる社内現象の幕開けとなるのか、予断を許さない。
コメント
歌で意思決定て…いよいよ本気でカオスの扉を開けてしまったな。この調子だと次はエビバデ集団ピアノソロ会議とか始まりそう。
納豆ご飯で全て解決する。時代はもうそこ。しかしファ♯レ♯減価償却…これは…古代文明の暗号!
会議終わるたび絶対喉枯れるやん。しかも金曜以外はカノンで退勤…会社出るのに全員バラバラなタイミングで歌ってんのシュールすぎて草。
あー…これは逆に効率化してないパターンですね…。198個の“在庫”で意思決定不能はさすがに笑う。
会議室で和音って聞くだけで無意味に納得してしまった。うちの会社もそのうち合唱始めそうで怖い…。